有沢と正午について考える

凜一シリーズを読み返しましたので、あらためて考えてみよう第一弾です。
今回は有沢×正午。私は最近、この二人のことばかりを考えて泣いています。

この二人の関係性について整理したいと思います。
前提として私の印象を述べますと、二人とも凜一のことが好きだったけれども(特に有沢さんはつらい時期に心の支えになったと思う)、有沢さんは氷川さんを前に身を引き、正午は蛾の先輩事件から同性を好きじゃないので凜一も信用していない。そんななかで出会った二人は、実は相性がバッチリでした!という印象です。

有沢さんはほぼ凜一との絡みしかないので、自然と凜一への態度と正午へのそれとの比較になってしまい、凜一下げしてるみたいになって悲しいんですが…有沢さんを語るうえで避けては通れない…泣

二人の相性

以下は凜一さんの分析ですが、特に有沢さんに関しては凜一さんが詳しいので、信用することにします。笑

有沢:情に濃(こま)い・弱いところを見られるのが大嫌いで、悟られそうになると相手を攻撃する
正午:自分のためではなく、他人のために泣くことが多い

対照的なエピソードとして、『碧空』の二章・三章があります。
二章:有沢が心臓に病を抱えていると察した凜一は、逃げないで手術を受けるように諭す。それに対して有沢は、「お前は独りでも平気と云った」と確認しつつ、「思いやりのある自分に酔うな」と突き放します。
三章:家出をしてきた正午と口論になりかけたところで、凜一は正午の気分を変えるために茶室へ誘う。そこで正午は、「独りで寂しくないの」と、凜一を思って泣く。

自分の弱さを暴かれるのを嫌うために、他人の感情に寄り添うことをも避ける有沢さん。
本人が何も云わなくても、相手の感情を想像して泣いてしまう正午くん。

そんな二人の出会いを整理してみます。

有沢は大好きだった祖母の葬儀があり、精神的にギリギリの状態で京都にやってきた

正午と出会った時、自分の内面が悟られそうで徹底的に攻撃した
(この時点では、二人とも印象は良くなさそう)

花見で正午が有沢にしがみつく =二人が身体的不安※を共有する

有沢:攻撃的な言動は無くなり、兄のような態度になる
正午:ああいう人好みと云う

有沢さんが凜一に対して攻撃的姿勢を崩さなかったのは、凜一には身体的不安がなかったから。
正午もその点に関して恐らく同様で、凜一は信用できないという姿勢を崩せなかった。

※二人の身体的不安について
私が考えている二人の不安です。どちらも「躰を肯定し、良い状態に回復したい」という願望があるように思います。
(凜一が有沢さんと氷川さんを比較しているときには、氷川さんはそもそも身体を意識していないため)
有沢:心臓に病を抱えていて不安で、そんな不安を無くして自分の躰を肯定できるようになれると信じている
正午:先輩によって人格を否定され、自分は穢いと思い芯が抜けた状態になってしまったが、自分の躰を肯定したいという気持ち(回復することを凜一に宣言していた)

二人の変化

二人が出会った後の、それぞれの変化についてまとめてみます。

【有沢】
有沢さんは正午に対しては短気を起こさず、兄のように話を聞いてくれます。作中では、正午の正直な物言いが逆に有沢にはいいのでは、と分析されています。
怒りっぽいのは「若葉のころ」の凜一への態度を見ても、昔と変わっていないように思います(泊まっていくという有沢に対し凜一がやんわり断ろうとすると、怒って出ていく)。ですが正午には発動しないのは、「珍しい」と作中でも云われています。
「碧空」で有沢さんは度々凜一の敬語を直そうとしたり、終始「ハッキリ云え」と注意したりします。正午は最初からため口・怒って喧嘩腰・ハッキリした物云いで、いらないことまで云う。笑
正午の分かりやすさ、ハッキリ溌溂とした部分が、有沢さんには好ましかったのではないかと思います。

※ここは私のクソ拡大解釈ですが、有沢さんの好きな花グラジオラス、真っ直ぐ溌溂と咲いていて、正午くんのイメージに合うなって…少し思うんですよ……

【正午】
正午は一緒に住んでいる凜一も驚いて言葉が出ないほどの変化です。
蛾事件以降の正午:人はもう好きにならない・信じられない、触られると吐いてしまう、口数が少ない、殻にこもっている、笑うことも少ない
有沢さんと出会ってからの正午:有沢さんを好きになる、有沢さんに触られても平気(脱ぐことも)、よく喋るようになる、以前の笑い方が戻る

有沢さんと出会った瞬間に、以前の正午が戻ったんですから、有沢さんパワーは絶大です。

※蛾の先輩のトラウマ
蛾の先輩に酷いことをされたとき正午は失禁してしまい、涙も鼻水も出放題なところに、先輩が「あとはもうあれだけだな」と云ってきます。「あれ」って「あれ」ですか…?!先輩!!!それで同性が苦手になってしまい、触られるのも嫌で吐いてしまう。
私の想像ですが、男としての自分が穢くて厭になったけど、何とか肯定したくて女友だちと遊んでみる。それでも傷は戻らない。
そんなところに有沢さんと出会い、キスはするし抱きつくし、ホテルに行くし、脱いで写真まで…有沢さんパワーは絶大です。(二回目)

ラストの心境を考える

下記別サイトのページで、若葉のラストで有沢さんが氷川さんの誤解を解きに行く背景について考えました。「若葉のころ:正午のはぐらかし」という項目です。
これをふまえ、ラストの二人はどのような心境だったのか考えてみたいと思います。ほぼ私の想像です。

【有沢さん】
最後に凜一を日本庭園に連れ出した時に、「どうしてもダメなのか」と、独りごとのように云っています。このセリフから迷いや未練のようなものが感じられます。凜一に逢いに行く前は、氷川と凜一の仲を取り持ってやろう、と決心していたと感じますが、実際本人を目の前にすると何だかやるせない。

氷川さんに逢う前に凜一の気持ちを確かめようとしたのかもしれませんが(ほんとにアイツでいいの?)、凜一は高校の時と態度が全く変わっていない!一大決心をした有沢さんにとっては、殴っちゃう案件だと思います。凜一さんには悪いけど…笑
ですがちゃんと怒ってくれるのは、有沢さんが凜一を想ってのことだと感じます。

最後立ち去るときに残したメモで、「また来ることがあったら連絡する」と書いているということは、もう凜一にはその後逢わないと決めている。氷川さんの話では、「お前が行かないなら俺が戻って行く」と云っているのに。二人が復縁するのを信じていたら素敵です。または、絶対説得してやるという決意のためか。かっこいいぜ…

結論、有沢さんが正午を真にどう思っているのかは解りませんが(泣)、凜一が好きな男と幸せになるのを願ってくれていると感じます。恋の傷は新しい恋で癒そう…正午くんがお兄さんを口実にアメリカにやってくるのを楽しみにしようね…

【正午】
こっちは結論から云いますと、自分は有沢さんが好きなのに、有沢さんは凜一しか見てないと思っている。

最後に「有沢さんがかまうのは、自分の躰が凜一に似ているから」と云っていましたが、その前から正午は、有沢さんが凜一しか見ていないと強く思っている気がします。有沢さんに凜一を真似ていると指摘されたのを気にしているのもあるかもしれません。
花見で有沢さんに助けてもらった翌朝、自分ではなく凜一が襲われなかったか確認しています。前の日に有沢さんにあんな攻撃的なキスをされておいて、普通自分の心配をする方がいいと思いますが…
また、省子さんの電話を受けた後に、有沢さんは省子さんの中に凜一を見ているとも云います。

その後、有沢さんとホテルに行ったり裸で写真を撮ってもらったり。凜一の不在のあいだに逢っているので、正午が有沢さんを呼んだ(教授の研究室経由なら連絡可能?)と思いますが、写真を撮らせてと云ったのは有沢さん?
氷川さんのセリフをそのまま信じるなら、裸に「して」と云っていますから、有沢さんが正午くんを脱がせた…拘りの強そうな有沢さんが、「碧空」では最後まで凜一の写真を撮らなかったのに、躰が似ているからという理由でこんなすんなり撮るのだろうか…?正午くんは華奢で、ちょっと頼りない感じだと思うんだけど…
一方の正午くんはホテルに裸と、「俺の躰しか見てないんだ」と思いやすい状況にある。

最後に正午は凜一に「有沢さんのどこが不足なんだよ」と怒るのは、自分は有沢さんに躰しか見てもらえないのに、凜一は有沢さんに想われていて羨ましいという気持ちも含まれているのではないでしょうか。
翌朝は思い直して、莫迦なこと云ってごめんと謝っています。やはり感情的になっていたんですね…

結局、この二人は「これからに乞うご期待!!」て感じのラスト。
有沢さんの家と暁方さんの住まいが近いのは、伏線だと信じてやまないんです。